第二十二回「今病んでいる人達へ」

folder_open大島龍穏, 妙蔵寺たより

2020年3月20日「妙蔵寺たより 116号」掲載
“ともしび”を語る

本楽寺修徒 大島龍穏

病気になって初めて知る健康のありがたさ。今更言う迄もありませんが発熱・頭痛・目眩・吐き気等々日常的に起こりうる病いは苦しいものですよね。ましてや脳梗塞・心臓病・ガン・肺炎等、死に直結する重篤な病を発症すれば目の前が真っ暗になり、死の影に脅かされてしまいます。

怪我なら外見上ある程度の状況が分かりますので今がどれ位の傷かという判断がつきますが、内臓疾患については、症状はある程度分かるものの体内で何が起きているかについては全く分かりません。したがって病院で検査を受け、診断結果を知らされる迄は不安に嘖まれてしまいます。重病になればなる程気付いた時には手遅れといったケースもかなり多いと聞いています。

私自身も五年前に舌ガンを患い、ステージ四と宣告されてしまいました。ステージとは病の程度をあらわすものであり、ステージ一からステージ四に分かれています。ちなみにステージ一から二は比較的軽く、ガンであっても早期発見の部類に入り、生存率は高いのですが、ステージ三になるとかなり進行が早いタチの悪いガンとなり、ステージ四はすでに他臓器に移転があり生存率もかなり低い重病といえるのです。

私の場合は舌にできたガンのほかに首筋にあるリンパ節に転移しており、下顎にしこりが大きく膨らんでいましたのでかなり危険だったようです。
こんな具合ですので二から三か月に一回の検査は今だに続いており、これから先も決して安心できないと常に主治医から言われ続け今日に至っています。

さて、これからが本題です。

これ程重い病気を抱えていると心から気の休まる事はありません。「何で自分の身にこんな事が起こってしまったのか?」「よりによって何で自分なのか?」と考えますが、ガンに限って言えば今や国民の二、三人に一人の割で患者がいると言われています。

自分だけが不幸なのではありません。軽い重いの差はあっても多くの方々が同じ悩みを抱えています。そんな中で一人だけ苦しみウジウジと悩んでいたのではよくなる病も決して良くならないのです。
「同病相憐れむ」という言葉があるように同じ病、同じ苦しみを持った者同士が互いに励ましあい助け合う事ができれば心の中に小さな灯がともります。

病に打ち勝つというとらえ方だけではなく、ありのままに病を認めた上で、今生かされているという喜びをしっかり受け止める事により、苦しみを乗り越える力につながるのです。

さあ、くよくよせずに一日一日を大切にし、前を向いて歩きましょう。

大島 龍穏(おおしま りゅうおん)

大島龍穏

1946(昭和21)年生まれ 横須賀市鷹取在住 福井県 本楽寺 修徒
高校卒業後、神奈川県警の警察官となる。様々な死を目の当たりにし、家族を失った遺族の悲しみや苦しみの心に “ともしび” を灯すために横須賀署刑事一課強行犯係長時に警察官を辞め、僧侶となる。全国をまわっての講演や法要等に加え、無料相談所「みちしるべ」を立ち上げ、相談者の悩みを受け止めて解決に導く活動を開始。
現在、久里浜少年院篤志面接院会長。型にはまらない方法で仏教の教えを実践している。著書に『鬼刑事僧侶になる』(サンマーク出版) 『定年出家』(小学館)。
妙蔵寺では「心の時間」を共に主催され、お彼岸やお盆のお経まわりや行事法要をお勤めいただいております。

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