第三十回「読書のすすめ」

folder_open大島龍穏, 妙蔵寺たより

2023年7月「妙蔵寺たより 124号」掲載
“ともしび” を語る

本楽寺修徒
大島龍穏

私にとって、本は大切な知恵袋になっています。
私達はどんなに努力しても身につく知識はたかが知れています。たとえ知識を得たしても「それが何なの?」と言われれば「それはそうだけど」と答えるのが精一杯です。しかし今迄知らなかった事を知る喜びを感じられるのは、我々人間だけなのです。

折角人として生をうけた以上、何でも知ってやろうという気持ちになった事はありませんか?私にとってそんな時の身近な先生は、色々な人生経験を持つ多くの方々の存在ですが、その他では何と言っても本でした。

子供の頃は漫画から始まり、鳥類・魚類・植物・昆虫類等の各種図鑑を見て、初めて目にする鳥や魚、美しい草花等に目を輝かせていました。その他には、エジソン、キュリー夫人、野口英世等々の偉人伝記を読んでいると「自分も大人になったら必ず大きな人間になって世の中や人の為になるんだ」と夢想したものでした。
中学に入るとトムソーヤの冒険、赤毛のアン等に胸を踊らせていました。
高校ではヘミングウェイ、トルストイ、パールバック、モーパッサン、O・ヘンリー等々外国人作家の本ばかり読み漁っていましたので日本文学には目もくれなかったのですが、ある時夏目漱石の「坊ちゃん」や「吾輩は猫である」を目にした時、あまりの面白さに引き込まれてしまいました。以来、明治・大正・昭和の作家にひかれ学校の図書館の虫となり授業中も教科書の下に本を置き小説を読んでいるといったあまり褒められない学生生活を送る事になったのです。

そんな青春時代を送った私ですが、警察官になってからは本を読む機会も少なくなりました。今はまた再び本の虫に戻り、歴史物・時代物・エッセイ集・格言集・宗教関係・推理小説等ジャンルを選ばず手当たり次第に目についた本を古本屋さんで1回に20数冊買い求め、夜床に入った時に本を読む時が唯一の楽しみになっています。
本には、作家一人ひとりが各種の文献を調べ上げた上で言葉として表現された物の見方、考え方、思想等が織り込まれています。その全てが正しいとは思えませんが、我々の読み方によっては必ず新しい発見をすることができます。

よく目から鱗が落ちると言いますが、まさに目を見開かされる思いをすることが沢山あります。本から得た知識を智慧にに変え、実生活に活かす事が出来れば、もっともっと心が豊かになり人生を楽しめるのではないでかと考えています。
是非読書をおすすめします。

大島 龍穏(おおしま りゅうおん)

大島龍穏

1946(昭和21)年生まれ 横須賀市鷹取在住 福井県 本楽寺 修徒
高校卒業後、神奈川県警の警察官となる。様々な死を目の当たりにし、家族を失った遺族の悲しみや苦しみの心に “ともしび” を灯すために横須賀署刑事一課強行犯係長時に警察官を辞め、僧侶となる。全国をまわっての講演や法要等に加え、無料相談所「みちしるべ」を立ち上げ、相談者の悩みを受け止めて解決に導く活動を開始。
現在、久里浜少年院篤志面接院会長。型にはまらない方法で仏教の教えを実践している。著書に『鬼刑事僧侶になる』(サンマーク出版) 『定年出家』(小学館)。
妙蔵寺では「心の時間」を共に主催され、お彼岸やお盆のお経まわりや行事法要をお勤めいただいております。

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